早期(約11,600~7,000年前)の縄文土器の装飾は、草創期に見られた編み籠の模倣から脱却し、縄文土器が「焼き物」としての主体性を発現すると共に縄文土器独自の装飾を身に着けた。小林達雄は、こうした早期に生まれた縄文時代を代表する装飾を「装飾性文様」と呼んだ。
装飾性文様は、文様原体の「回転施文」による「装飾性文様A」と、工具を引いて描く「沈線文」等による「装飾性文様B」に分けられる。
「装飾性文様A」は、文様原体を回転させ、原体の幅の分だけ帯状に展開する。草創期には見られない文様で、「施文具形態文様」とも呼ばれる。回転縄文や撚糸文、押型文などが該当する。
「装飾性文様B」は「沈線文」に代表され、箆や棒状の工具を用い、曲線や幾何学を自由に描いた。「装飾性文様A」が直線的で単調な文様を描いていることとは対照的である。文様を縦や横に区切る「区画文」や、渦巻きなどの単位的な図形(「単位文」)も生まれた。こうした装飾性文様Bのような、工具の形態が残らない文様は「方位形態文様」とも呼ばれている。
早期に生まれた縄文土器の装飾は、その後、晩期まで続く基礎となった。いわば、縄文時代早期は、その後の縄文土器文様を形作った“確立期”ともいうことができる。
苗場山麓の早期の土器
参考・引用文献
稲田孝司 1972 「縄文式土器文様発達素描・上」『考古学研究 第18号4号』
小林達雄 1980 「総論」『縄文文化の研究3 縄文土器Ⅰ』 雄山閣
小林達雄 1988 「縄文土器の文様」『縄文土器大観2 中期Ⅱ』 小学館
津南町教育委員会 2024 『苗場山麓の土器文様―縄文土器の文様変遷史―』