人と動植物の関わり ー危険な動物-

  

目次

  1. はじめに
  2. 危険な動物
  3. 人里に近づく動物

1. はじめに

 現在日本には約9万種の生物がいるとされており、哺乳類は約100種以上、両生類は約70種、爬虫類は約70種、昆虫類は約3万種、魚類は約300種以上、鳥類は約700種、貝類は約1,000種以上、無脊椎動物は約35,000種である。これらの種類すべてが人間にとって危険なのかと言えば、これらの動物のほとんどは私たち人間にとって無害な動物である。しかし、野生動物は全て危険だと考えたほうがいい。今私たちが畜産などで飼育している動物、ペットとして飼っている動物の多くは、野生動物を祖先の人たちが飼い慣らしてきた結果である。

  

2. 危険な動物

哺乳類:ツキノワグマ・ニホンザル・イノシシ

両生類:アマガエル・アカハライモリ

爬虫類:ニホンマムシ・ヤマカガシ・シマヘビ

昆虫類:ハチ類など

魚 類:ギギ・アカザ

哺乳類

ツキノワグマ

本州最大のほ乳類である。春は山菜、夏は昆虫、秋は木の実など植物食が強い雑食で、自ら他の動物を追う狩りを行うことは少ないが、弱っている動物や死体を食べることはある。生息地である山で、ブナやドングリなどの木の実が不作の年は人里に下りてきやすくなる。農作物への被害近年では人里近くまで下りてきて人的被害や家畜やペットへの被害も報告されている。また、山菜採りやタケノコ採り、キノコ採りといったように、山の中に入る人が増えたことで、クマと遭遇しやすくなり、被害に遭うというケースも毎年確認されている。クマに遭遇したら、静かに後ずさるか、首を腕でカバーしてうずくまるようにする方が良いとされている。決して、背を向けて走って逃げたり、死んだふりをしてはいけない。クマは動物の死体を食べるし、背を見せて逃げると追う習性があるため、絶対に避けるべきである。山や畑で作業する場合、登山やピクニックなどに行く場合など、クマ用スプレーを携帯しておくべきである。
ツキノワグマ

ニホンザル

 世界にはサルの仲間が約250種以上いる。そのほとんどは熱帯から温帯地域に生息しており、最も北、積雪地帯に生息し、青森県の下北半島まで分布する珍しいサルである。
 植物食の強い雑食性だが、トカゲやカエルなどの小型の脊椎動物も食べる。群れで行動するため、農作物に与える被害は深刻であり、少しかじって捨てるという食べ方をするため、物的にも心的にも被害は大きい。農作物を食べるようになって栄養状態も良くなった。そのため、繁殖は3年に1回だったのが、2年に1回になり、繁殖率も上がっている。そのため、農作物の被害は増していく一方であり、更には数が溢れ、山から追われたサルが人家近くまで下りてくるようになってしまっている。これにより、人を恐れなくなり、人を襲うようになってしまう。
ニホンザルの群れ
 ツキノワグマとニホンザルが北海道にいない理由は、北海道と本州との間(津軽海峡)にブラキストンラインと呼ばれる動物の分布境界線があるためである。このブラキストンラインを境界として動物の分布する種類が異なると言われている。

イノシシ

 イノシシは鋭い牙を持つ野ブタである。嗅覚が鋭く、土の中にいる昆虫や植物の根などを掘り起こして食べる。力持も強く、掘り起こす際に大きな石や太い木があっても動かしてしまう。これは首の筋肉が特に発達しているためである。元々イノシシは、その足の短さから、積雪が30cmを超える日が70日を超える地域では生息できないと言われていた。しかし、それは間違えであり、江戸時代後期に書かれた『秋山記行』にはイノシシの名が書かれている。明治以降その姿を消していたようだが、再び姿を見せるようになってきた。雑食で植物から小型の哺乳類まで何でも食べる。そのため、農作物の被害が出ている。田畑の農作物を食べるだけでなく、法面や掘り起こすことでの被害も出ており、その被害額は数億にも及ぶとされている。また、突進や牙による咬みつきによって人的被害も報告されている。イノシシの突進力はすさまじく、人であれば良くて骨折、悪ければ死ぬ可能性があるため、気をつけなくてはいけない。

両生類

アマガエル

 夏になると水田周りでよく見かけるカエルである。葉の上や石が多い場所など、生息している環境によって緑色や灰色などに変わる。吸盤が発達しており、2階建ての家の窓にくっついていることもある。子どもたちが捕まえて遊んでいるところをよく見かける。しかし、毒があることを知っている人は少ない。ニホンアマガエルの皮膚から分泌される毒は皮膚を守る毒で、ブフォトキシンや抗菌性ペプチドのため毒性は弱く、死に至ることはないが、触った手で目をこする、口にいれるなど、粘膜に触れる行為をすると痛みや炎症を起こす可能性があるため、気を付ける必要がある。

アカハライモリ

 ニホンイモリの別名をもつ。標高のやや高い場所から水田、用水路など広範囲に生息している。昆虫や無脊椎動物などを食べている。全体的に黒いが腹部が赤く不規則な黒斑があることから、アカハライモリと名付けられた。この腹部の色は警告色と呼ばれ、「毒を持っているぞ、食べると危険だぞ!」と色で他の動物に教えているのである。実際皮膚からは毒が分泌される。この毒はフグと同じテトロドトキシンである。触っただけで問題はないが、触った手で目や口を触ると危険なため、すぐに手を洗ったほうがいい。
アカハライモリ

爬虫類

ニホンマムシ

 毒蛇としてよく知られているだろう。楕円形の斑紋が並び、全体的に褐色をしている。水田の周辺や水辺などの草むらを好んでいる。比較的おとなしく、人などが近くを通るときには身を縮め、動かないようにする。しかし、触ろうとしたり、うっかり踏んでしまうと咬まれてしまう。首をくの字に曲げ、尾を細かく動かす行動は、威嚇行為なので、すぐに離れるべきである。マムシの毒は出血毒で、血管や筋肉を破壊し、激しい痛みに襲われ、内出血や壊死を引き起こす。重症化すると腎不全で死に至ることもあるという。ハブよりも毒性は強いが、マムシ自体が小さいヘビであり、毒の注入量も少量のため死亡率は低いと言われている。ただし、油断は禁物である。咬まれたら慌てず、咬まれた部位を洗い、心臓に近い部分を縛り付け、すぐに病院へ向かうべきである。
川を渡るニホンマムシ

ヤマカガシ

 田んぼや畑のあるところから標高の高い場所まで広く生息し、普通に見られるヘビである。背面は褐色で、黒色の斑紋があるが、個体差があり、オレンジ色が無い種や全体が黒ずんでいる種もいる。比較的おとなしく、すぐに逃げ出す。動きは俊敏である。毒はマムシと同じ出血毒だが、マムシよりも強力で、血液凝固作用があるため、内出血や心不全を引き起こし、死に至ることがある。すぐに血清を打つ必要がある。ヤマカガシは口が小さく、毒があるのは奥歯のため、咬まれても奥歯でなければ心配はいらない。そのため、最近までヤマカガシは毒蛇だと考えられてこなかった。しかし、ヤマカガシによる死亡事故が発生したため、調査し毒蛇だと分かった。ヤマカガシは奥歯だけでなく、首の頸椎付近から毒液を出すことが出来るため、むやみに触らないほうがよい。カエルを好んで捕食しているため、水田近くに多く、特にヒキガエルを好んでいるため、ヒキガエルの毒を蓄積していると言われている。
ヤマカガシ

昆虫類

オオスズメバチ

 昆虫類は数が多く、人に害を与える種も多いため、身近に生息しており、気をつけてほしい種として、オオスズメバチを紹介する。
 オオスズメバチは世界最大のスズメバチであり、大きな顎と毒針が特徴である。女王蜂が約5cm、働き蜂が約3cmになる。スズメバチ種の中でも、特に攻撃的で獰猛な種であり、動くものに対してとても敏感。巣の近くを通ると威嚇してから集団で襲ってくるため、見かけたらその場を離れた方がいい。毒性はセイヨウミツバチの方が強いと実験結果が出ているが、ミツバチ種は1度毒針を打ち込んだら死んでしまうが、スズメバチ種は何度も打ち込めるため、毒の強さだけでなく、毒の量も多いため、危険である。毒だけでなく、顎の力も強く、人間が咬まれたら簡単に食い破られ、出血するほどである。
オオスズメバチ

魚類

ギギ

 ナマズの仲間で、本来は琵琶湖以西に生息していた種であるが、アユの放流に伴って新潟県内にも入ってきた。主に阿賀野川に定着しているとのことだが、千曲川水系で確認されている。胸ビレと背ビレには両側に鋸歯をもつ毒針がついており、刺さると容易には抜けない。

アカザ

 日本の固有種で、河川の上流から中流といったきれいで礫質の底を好む、絶滅危惧Ⅱ類に指定されるほど数を減らしている。背ビレや胸ビレに棘がある。このトゲには毒腺があり、刺されると激しく痛む。死に至ることは無いが、ハチに刺されてように痛むとのこと。

アカザ

  

3. 人里に近づく動物

 日々ニュースでツキノワグマやニホンザル、イノシシが町中に出没したと報道されている。出没するだけならまだ良い方である。ツキノワグマに襲われたというニュースも多くなっているように感じる。なぜ人里に降りてくる野生動物が増えたのだろうか。
 ツキノワグマが人を恐れなくなってきたことが一番の原因だと考えられる。原因として、登山や山菜採りのために山に入る人が多くなったことで、人を身近に感じるようになったこと。また、90年代までは里山を整備していたが、それ以降は里山の整備をしなくなったことで、鬱蒼としてきたことで、生息域を増やしたとも考えられる。他にも、強いオスグマを避け、若く弱いクマや子連れのクマが里山や市街地に出てくる。里山や市街地のように、人との距離が近くなってきた現代のクマが子育てをするとどうなるか。小グマは母グマから餌の取り方を学ぶ。結果として、市街地周辺で育ったクマは山に餌が無いとき、市街地に来ることを恐れず、農作物だけでなく、お墓にお供えしてある果物やお菓子を食べにくる。
 これらの理由から、これからもクマの被害は増えていくだろう。苗場山麓のような中山間地域は、高齢化や地域の局所化に悩んでおり、里山の手入れもままならない状況である。そのため、このようなクマによる被害が増えてきたと考えられ、日本の社会問題だと提言する方もいる。クマを殺すか、保護すべきかの是非を問うよりも前に、ツキノワグマや野生動物による人的被害を、社会問題と位置づける必要がある。

参考・引用文献

内山りゅう・前田憲男ほか 2002 『決定版 日本の両生爬虫類』 株)平凡社
湯沢町史編さん室 2005 『湯沢町史・双書6 湯沢の自然―植物―』 湯沢町教育委員会
苗場山麓ジオパーク振興協議会 2021 『苗場山麓ジオパークGUIDEBOOK』 ほおずき書籍
栄村誌編纂委員会 2022 『長野県 栄村誌 自然編』 信毎書籍印刷株式会社