本ノ木遺跡の信濃川側に一段低い幅狭い段丘面がある。地表面では、本ノ木遺跡(約214m)に対して下段丘面(約208m)であり、その比高は約6mを計測する。この本ノ木遺跡の信濃川端部から下段丘面に掛けて調査トレンチを設定し、調査したのが國學院大學考古学研究室2007年調査であった。調査の始めでは「ニセローム」と呼び、その堆積に疑問を持ちながら、厚い堆積物を苦闘しながら掘り進めた結果、ニセロームと呼んでいた堆積物の下から黒土が発見され、その黒土に包含されていた炭化物を検出して年代測定を試みた。その結果、炭化物の測定年代が約14,000年前と求められた。すなわち、約14,000年以降にニセロームが堆積したことになった。さらにこの下位段丘面よりも約5~9m下に卯ノ木低湿地遺跡や卯ノ木遺跡が立地していた。しかし、これら二つの遺跡からニセロームは検出できなかった。
その後の地形・地質調査の結果から、ニセロームは信濃川対岸の真山が山体崩壊した際に堆積した崩壊堆積物であることが判明した。その年代は、下位段丘面黒土出土の炭化物(約14,000年)よりも新しい。さらには、卯ノ木低湿地遺跡の形成時期約9,500~9,000年よりも新しい(卯ノ木低湿地遺跡には山体崩壊堆積物はなく、それらを信濃川が運び去った後に段丘面が形成している)と判断される。今後、機会があれば、下位小段丘面の段丘礫層上面から黒土層までに包含されている遺物の有無や、土器型式の把握は本ノ木遺跡-下位小段丘面-卯ノ木低湿地遺跡・卯ノ木遺跡における活動変遷を追える重要な研究を地域研究として進めたいものである。
ニセローム地層図
本ノ木遺跡の位置と山体崩落堆積物の関係
参考文献
佐藤雅一ほか 2017 『本ノ木-調査・研究の歩みと60年目の視点-』 津南町教育委員会