火焔型土器の「火焔」は通称であり、「水」や「流水」の意味を考える研究者もいる。しかし、ここでは学術用語として火焔型の用語を採用する。大きな特徴は、口縁の4つの「鶏頭冠状把起」が等間隔に貼り付けられることである。その間を「鋸歯状突起」が埋める。土器器面を観察すると、口端部に幅狭い文様帯がある。ここには「袋状突起」を挟んで「櫛状文」が配置する。口頸部は鶏頭冠状突起基端部から連結する貫通孔を持つトンボ眼鏡状突起(環状突起)が縦位に貼り付き、その下端部に口を開いたような貼付文が付く。さらに胴部は、口を開いたような貼付文に連結して、縦位に2本の隆起線が懸垂し、その中間に袋状突起が貼付する。すなわち、鶏頭冠状突起基端部から文様が縦位に連なり、器面を縦分割する構成を持つ。一方、視点を変えれば、口を開けたような貼付文の下位には、胴部上位を横位に区画する2本1帯に隆起線文が横位分割する。すなわち、胴部は横+縦に分割線が入り、胴部を4枚のパネルで区画する。この4枚のパネルは、上位と下位に分かれ、上位は渦巻き文が連結して横流れの構図である。下位は、上位の文様に規制されるが、縦位指向の逆U字状文で埋められ、その一部には楔的に棘状文が左右に刻まれる。これにより、縦指向の文様に変化が与えられている。
問題は、左右非対象の突起形態である。例えば、左の縦に伸びる部位を尾部と呼び、右側の端部を頭部と考えるならば、4つの突起の頭部は反時計周りに巡る(A+A+A+Aの4単位構成)である。この視点で多くの火焔型土器を観察するならば、反時計周りと時計回りがあり、大半は反時計周りである。すなわち、巡る方向は違うが、(A+B+A+B)や(A+A+B+B)と表示できるBとしての異なる突起を含む構成はない。きわめて、火焔型土器はルールに沿って作られていることに気が付く。
火焔型土器 (堂平遺跡)
鶏頭冠のアップ
トンボ眼鏡状突起のアップ
参考文献
佐藤雅一ほか 2014 『魚沼地方の先史文化』 津南町教育委員会
佐藤雅一ほか 2019 『技と造形の縄文世界―形と文様にみる美の心―』 津南町教育委員会
佐藤信之ほか 2019 『苗場山麓の土器文様―縄文土器の文様変遷史―』 津南町教育委員会