- 日本列島は、火山灰だらけである。というのも、世界の中の日本列島を見てみると、日本には現在111の活火山があり、世界の活火山(約1,500)の約7%に相当する(気象庁の定義)。しかも、過去数万年の間に、日本列島では大規模な噴火が何度も発生している。これらの噴火は、広範囲に大量の火山灰(テフラ)を堆積させた。
- 苗場山麓域では、河岸段丘という平坦な面が広がっている。そのため、地表付近の腐植土の下部には、火山活動により、偏西風にのって飛来した火山灰が降り積もり、保存される環境がある。その視点で見ると段丘面と段丘面との境目で堆積物を容易に観察することができる。
- 多くの火山活動による火山灰の中の鉱物(ジルコンや黒曜石)から、火山灰の堆積した年代を知ることができる。このことを利用して地層の重なりや地形の形成年代を特定することができる。広範囲に降り積もる特定の火山灰や軽石など(「テフラ」という)を「タイムライン」のように利用し、地質時代のできごとや地史を解明するのに用いられ、防災や考古学でも活用される。この学問を『テフロクロノロジー(火山灰編年学)』という。
- 平坦な段丘面には、厚い火山灰が層をなしている。直接観察に耐えられる谷上面や米原面では、8~10mの厚さで、大量の火山灰が堆積している。下図は、美穂地区で見られる露頭である。厚さは、5mを超えている。表面は赤褐色の火山灰が大部分を占めている。一部に中国大陸から飛来する黄砂も挟在すると考えられるが、判別は難しい。この露頭を概観すると、色調の異なる地層が積み重なっていることがわかる。

- この厚い火山灰は、見た目では、同じような赤褐色をしている。離れてみるといくつもの層が重なっていることがわかる。近づいて手に取り、よく観察すると、軽石質の層や白色の地層が挟まっていたりする。このような特徴のある火山灰を水洗いし、泥分を洗い流していく(ア・イ)と有色・無色の鉱物粒が見えてくる。地層の上部から下部に向かって、例えば5cmごとに火山灰を採取し、丹念に水洗いし、中に含まれる鉱物や岩片等の種類や割合を調べていくと特徴のある火山灰が離れた場所においても同じ層準のところに出現することがわかってくる。つまり、同じ時期に遠方から飛来し降下して堆積したことがわかる。


- 日本の地層を調べると、広域にわたって特定の火山噴火による火山灰の層(テフラ層)が確認できる。また、隠れているが、1m下部には、黒雲母の火山灰層が挟在する。
- 苗場山麓の米原(まいばら)段丘面には、約40万年前から完新世までの堆積物を見ることができる露頭があり、火山活動の年代を教えてくれる火山灰を挟んでいる。近くの火山では、妙高山・黒姫山・飯縄山、浅間山、遠方では、大山、姶良カルデラから噴出した火山灰は、九州から東北地方北部まで広範囲に分布していることがわかっている。他にも段丘上に堆積した火山灰には、阿蘇山、御嶽山もあげられる。

- ここでは、大山倉吉軽石と姶良丹沢火山灰の2つを記載する。
- 大山倉吉軽石(DKP)
- 鳥取県の大山の火山活動で、約5.5万年前に噴出(ふんしゅつ)した火山灰・軽石が偏西風にのって東方に降灰した。


黒雲母や角閃石の結晶が特徴
- 姶良丹沢火山灰(AT)
- 今から約3万年前、鹿児島県の錦江湾(きんこうわん)(カルデラ)から大量の火山灰が噴出し、偏西風にのって遠くは北海道にまで到達した。

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破片状のガラスが特徴
- このような火山灰の探求は、河岸段丘の下部を構成する魚沼層群についても研究がされている。魚沼層群中には、層厚1,500mにも及ぶが、特徴のある火山灰層を数10枚挟んでいる。中でも堆積した順序や時期を教えてくれる火山灰層がいくつも見られる。中でも含まれる鉱物に菫(きん)青(せい)石(せき)を含む火山灰は、榛名山付近から飛来した火山灰は、SK030の記号で示され、堆積した年代が110~120万年前とされる(給源は榛名山付近とされ、「上州から越後に飛来」から「上越火山灰」ともいう)。また、魚沼層群下部層には、ザクロ石(ガーネット)を含む火山灰は、220万年前の火山灰とされる。
- 「うもれあ」での展示では、菫青石を含むSK030火山灰と魚沼層の中部と下部の境目の境界部の約200万年前に飛来したSK110火山灰のほか、ローム層中に挟んでいるAT (姶良丹沢)火山灰とDK(大山倉吉)火山灰を紹介する。
- 日本列島の広範囲に降った火山灰は、噴火の年代がわかっているため、地質調査をする際、火山灰を含む地層で堆積した時期がわかり、考古学にも活用される。苗場山麓では、河岸段丘と魚沼層群に挟まる火山灰の調査で、苗場山麓のでき方を知るヒントを探ることができる。具体例として美穂の露頭を取り上げて紹介している。火山灰をはじめ、軽石などの火山砕(さい)屑物(せつぶつ)が地質学的な時間尺度では、極めて短時間に広域を覆う特性がある。それを生かした年代を知る方法を「火山灰編年学(テフロクロノロジー)」という。過去の火山活動による火山灰の降った年代は、地層(鉱物)に残された放射性物質の炭素などの物理的な方法や示準化石といった古生物の研究から求められる。
参考文献
町田洋、新井房夫 2003 『新版 火山灰アトラス』 東京大学出版会
町田洋 1977 『火山灰は語る』 蒼樹書房

