苗場山麓の大地こそが芸術である。その風土に建造された神社の彫刻は素晴らしいが、江戸時代の山里に住む民衆が描いた格天井の錦絵も感嘆の一言である。天井を向いて、大の字に寝て鑑賞する錦絵格天井は、江戸時代の美術館である。しかしながら、この研究はすこぶる遅れがあり、俳諧の献額を含めた総合的かつ体系的な研究が必要である。
分水嶺を越えた魚野川水系には、大塚太良兵衛や尾平(おびろ)石工と呼ばれた方々がおり、素晴らしい石造製作技術を持ち、その記録を残したことで知られる。しかし、秋山郷界隈の山里にも数多い石造物が残され、石ノミで刻まれている。その数、津南町だけで約6,000体とも言われており、その刻みや赤色・黒色塗布など素晴らしい芸術品が散在する。
錦絵 格天井
上日出山 聖観音
熊谷源太郎作 本堂内彫刻
越後のミケランジェロと呼ばれる雲蝶は、五色の胡粉・顔料を塗る派手な彫刻を特徴とする。ノミによる木材へ削り技術は、その白木の状態で観察することができるが、胡粉・顔料を塗ることで削り技術を細かく観察できないことは残念である。しかし、魚沼市開山堂の作品は素晴らしく、その使用した大量な胡粉・顔料がどのような質のもので、どのような入手ルートから入れ込んで使用したのかなど、まだ解明されていない山里の芸術の不思議がある。
一方、雲蝶の兄貴弟子と云われている熊谷源太郎(小林源太郎)は、白木彫刻を特徴とする。よって、ノミさばきの技術を容易に観察でき、その高さは一目置かれる。この熊谷源太郎作品が、なぜか苗場山麓に点在し、某寺には自筆の掛け軸などが残されており、まさしく江戸時代の美術館である。
熊谷源太郎作 まくり『双龍図』