ここでは化学繊維製品を使用した衣服を「衣類(いるい)」、植物繊維や動物の皮や毛を使用したものを「衣類(ころもるい)」と便宜的に呼称する。
古くから現在に至るまで着用されてきた衣類(ころもるい)には、様々な素材があり、これらの素材は色々な工程を経て糸となる。糸の元になる繊維には、「天然繊維」と「化学繊維」に分けられる。天然繊維とは、綿や亜麻(あま)などの植物から作られる「植物性繊維」と「羊毛」や「絹」などの動物から作られる「動物性繊維」などがある。これら『麻』『綿』『絹』『羊毛』は4大天然繊維と呼ばれている。天然繊維に対して「化学繊維」とは、石油などを合成して作られる「合成繊維」と植物を科学的に処理して作られる「再生繊維」がある。1938年にアメリカで化学繊維ナイロンが発明されたことで、天然繊維から化学繊維へと移行していった。
〈植物から作られる衣類〉
『麻』や『綿』のような植物繊維を使用した衣服だけでなく、『ミノ』や『スゲボウシ』などとして利用されてきた。『衣類(ころもるい)』の材料となる植物は以下の通りである。
ミノ:ミヤマカンスゲ、稲ワラ、ガマなど。
ミヤマカンスゲは乾燥させてから使う。乾燥させたものは水をはじき、軽くて丈夫という特性があるという。ミノ全体をミヤマカンスゲで作成するのではなく、稲ワラを肩や襟部に使用していた。
スゲボウシ:タヌキランを使う。葉の長さが1m以上にもなるため、材料とした。7月に採取りして乾燥させ、冬仕事として作っていた。雪国には必需品であった。




〈動物から作られる衣類(ころもるい)〉
『羊毛』や『絹』から作られる動物性繊維の他に、カモシカなどの動物を狩猟した際に得られる皮を加工して利用した服装類がある。
テブクロ:テッカワ、テカワともいう。現在のミトンのような形をしている。カモシカの毛皮だけで作られており、前脚と後脚のほかに胸の白く柔らかいサクリと呼ばれる部分を使用している。縫合には、イラクサを使用したと思われる。
クツ:カモシカの毛皮を使用している。片足作るとき、前脚と後脚を1本ずつ使うため、
一足揃えるのにカモシカが一頭必要になる。
シリアテ:カモシカの頭部毛皮を使用した。狩猟の際、常に腰から下げ、座るときに下に敷く毛皮であり、タヌキやキツネの毛皮も使用されているが、長時間使用していると、水が染みてくる。カモシカの毛皮は毛が長く皮が厚いため、水を通さないので使用されている。




参考・引用文献
宮本馨太郎 1979 『図録 民具の基礎知識』 柏書房
小林泰彦 1996 『むかし道具の考現学』 風媒社
石澤貴司ほか 2015 「秋山郷の狩猟民具」『津南学vol.4』 津南町教育委員会
苗場山麓ジオパーク振興協議会 2018 『苗場山麓植物民俗事典』 ほおずき書籍

