本ノ木遺跡から出土した土器群は、佐藤達夫によって、その土器相が整理され公開された。当初「特殊な土器」と呼ばれた一群である。その中核をなす土器が縄原体を回転施文することなく、押圧施文する土器であったからこそ、山内清男は特殊な土器と表現したと推測される。これら押圧縄文土器の文様帯変換部位にハの字爪形文を施す特徴がある。さらに爪形文の併施資料があったという。正位のハの字爪形文土器、無文土器に沈線で斜格子目文を描いた土器も組成していたというが、現在、確認はできない。
特殊な土器
しかし、沈線で格子目文を描き、口縁部に押し引き文を施文する土器が、近傍の寺田上A遺跡で出土している。また、この押し引き文は、本ノ木遺跡周辺の卯ノ木南遺跡やおざか清水遺跡などで押圧縄文土器と出土している実態があり、佐藤達夫が指摘した沈線の斜格子目文土器は、これらに通じる土器群であったと推測される。また、この斜格子目の文様モチーフは幾何学モチーフであり、隆起線文系土器後半期に存在し、その系譜的関係は注目される。さらに微隆起線文に注目するならば、底部から放射線状に微隆起線文が観察できる資料が本ノ木遺跡にある。これを仔細に観察するならば、土器器面を親指と人差し指で挟み粘土線を繋げる所作で、その両脇にハの字を呈する爪形跡が残されている。すなわち、微隆起線文とハの字爪形文との関係を探る重要な資料が存在する。
魚沼市黒姫洞窟遺跡では、層位的に草創期土器群が把握されている。微隆起線文土器→爪形文土器→本ノ木式土器類似資料(押圧縄文+ハの字爪形文+微隆起線文の併施土器)が新旧関係で理解されている。すなわち、微隆起線文土器や爪形文土器より新しい段階に本ノ木式土器を配置することが可能であろう。
苗場山麓では、本ノ木式土器を定点に、それよりも古相の土器群と新相の土器群を把握して編年学的に配置し、それに伴う石器群を含めた総合的な草創期社会へのアプローチ研究の扉に手が届いた所である。今後の研究に期待したい。
参考文献
佐藤雅一ほか 2017 『本ノ木-調査・研究の歩みと60年目の視点-』 津南町教育委員会