王冠型土器も、通称である。台形状の把手が4単位で巡る状態が王冠を彷彿したことから付けられた。それはそれとして、この王冠状の把手の左上端部には、原則抉りが付く。この王冠状把手は4単位である。しかし、その表面文様と頭部文様で検討するならば、Aの4単位ではなく、A+B+A+Bや、単位が乱れるものがあることに気が付く。火焔型土器よりもルールが弱いようである。また、器面構成にも火焔型土器とは異なる点がある。それは口端部文様が表面を向くことはなく、口唇部と融合する。口頸部と胴部の文様構図や文様モチーフは、火焔型土器と同じであり、破片資料を観察しても火焔型なのか、王冠型の破片なのかの判断はできない。
この王冠型土器は、4単位波状口縁を呈する土器の系統に属する。しかし、火焔型土器は平縁口縁に突起が貼付(デコレーション)されるものがあり、器形的には系統が違う。
広義の王冠型土器には、左右対称形も存在することが資料増加に伴い理解されるようになってきた。さらに王冠型土器に含まず、どちらかと言えば平縁系統の土器と理解する新しい形態の土器もあることへの理解が深まっている。

王冠型土器

参考文献
佐藤雅一ほか 2014 『魚沼地方の先史文化』 津南町教育委員会
佐藤雅一ほか 2019 『技と造形の縄文世界―形と文様にみる美の心―』 津南町教育委員会
佐藤信之ほか 2019 『苗場山麓の土器文様―縄文土器の文様変遷史―』 津南町教育委員会

