- 食物連鎖は自然界のシステムであり、生物種の関係性における「食べる」「食べられる」を表現する言葉である。食物連鎖には階層があり、大きく分けて3つに分類される。それぞれ『消費者』『生産者』『分解者』と呼ばれる。生物の量を図にするとピラミッドのような形になる。これを生態系ピラミッドと呼び、上位であるほど広大な土地(餌場)を必要とし、数が減っていく。そのため、下位の生物がその数を減らしピラミッドの形が歪な物に変化した場合、この食物連鎖によって自然は回っている。目に見えないほど小さい生き物、大きな生き物、人類など全ての生き物は必ず食物連鎖の輪の中に入っている。例外は無い。
- 生態系をピラミッドで表現した。しかし、本来の生態系は下から上に一直線で表現されることはなく、実際には網の目のように複雑に絡んでいる(食物網)。
- ここで紹介する生き物は極一部であり、代表的な生き物である。
- 分解者
- 生物の排泄物や遺骸をそのまま放置していると、時間経過とともにその場から無くなる。これは、分解者による働きによるものである。
- 細菌類(バクテリア)、アオカビやキノコなどの菌類、土壌中のミミズやダンゴムシなどの小動物のことを総称して分解者と呼ぶ。分解者には、ミミズや昆虫など肉眼で確認出来る大きさの生物の他に、微生物と呼ばれる、肉眼で見ることが出来ない細菌や菌類、バクテリア、原生生物の他に、小型の動植物が含まれる。
- ミミズやダンゴムシ、蛆虫を初めとした小動物は、植物遺体や動物遺体を細かく分解する。化学肥料やタマネギ、トウガラシなどの刺激物は食べることが出来ないが、それ以外の生ゴミは分解するため、生ゴミの処理も可能である。食べたあとに出るミミズの糞は土壌の団粒構造を作り、物理的に土壌の構造を変化させる。またこの団粒構造によって土壌に隙間を作り、生産者である植物の根の呼吸困難、成長阻害の緩和、水分の浸透と保水を維持させる働きが生まれる。
- キノコを代表する菌類は、有機物を無機物へと分解している。他の分解者との違いとして、特にキノコ類は他の微生物では分解が難しい、木材に含まれるリグニンやセルロースを分解することが出来る。また、最近は人体に有害なダイオキシン類や内分泌性攪乱化学物質(環境ホルモン)などの難分解性物質をも分解する能力を持っていることが判明している。
分解者 (絵:中沢英正)
- 生産者
- 植物全般のことをいう。
- 植物も栄養を取る必要があるが、植物は基本的に自由に動くことが出来ない。そのため、成長に必要な栄養分を根から吸い上げる以外に、自分で作り出している。その栄養素が『有機物』である。この有機物を作るには、根から吸い上げた水と空気中の二酸化炭素が必要である。葉の中には葉緑素という緑の色素があり、この葉緑素が太陽の光を利用して、水と二酸化炭素から「酸素」と「糖」を作り出す。すなわち、『酸素』と『デンプン』などを作り出す。デンプンは果実や根などに溜めることができる。酸素は気孔から排出する。この光合成は植物や藻類、一部の細菌によって行われる。
光合成の仕組み (絵:中沢英正)
- 消費者
- 消費者は、自ら有機物を作れないので、生産者や他の消費者を食べることで活動している生物のことである。ここでは『1次消費者』『2次消費者』『3次消費者』『高位消費者』と分けたが、このように細分化しない考え方もある。
- 〈1次消費者〉
- 主に植物を主食としている昆虫や小動物のことである。
- 昆虫:チョウ・ガ類、バッタ類など
- チョウやガ類の幼虫が植物を食べている。種類によって食草が変わってくる。アゲハチョウやカラスアゲハはサンショウなどのミカン科の植物が食草である。チョウの成虫は花の蜜や樹液を吸うが、蛾はチョウのような口を持たない。
第1次消費者昆虫類 (絵:中沢英正)
- 哺乳類:ノウサギ、ニホンリス、ホンドモモンガ、ムササビ、ニホンジカ、ニホンカモシカ
- ノウサギは日本固有の中型哺乳類で、長い耳と長い後ろ足が特徴的である。本州の日本海側と東北地方に生息するノウサギは、冬期間は体毛が白くなるため、トウホクノウサギとして亜種に分類される。丘陵地から山地にかけて棲み、草や木の葉、小枝、樹皮を食べている。人にとって身近な狩猟対象であったと同時に、キツネや猛禽類にとっては大切な獲物である。繁殖シーズンは3月~10月にかけてで、この間に3~5回繰り返し出産を行う。
- ニホンジカは大型哺乳類の1種である。主に植物を食べているが、鉄分が足りていない場合は線路や鎖などを舐めることが知られている。また、目の前に弱った動物がいれば食べることも報告されており、人骨をかじることも報告されているため、草食動物ではあるが、雑食動物としての一面も持ち合わせている。
- 〈2次消費者〉
- 植物を食べている1次消費者と、同じ2次消費者を消費する生き物たち。
- 昆虫類:カマキリ、トンボ類、スズメバチ類、アリ類、キリギリスなど
- カマキリの最大の特徴である両腕はギザギザのトゲが生えた鎌状になっており、捕まった獲物は逃げることができない。昆虫だけではなく、小型の鳥類、爬虫類、哺乳類、魚類などを捕食する。待ち伏せをし、目の前の動くものには飛びつく習性がある。メスの場合、目の前をオスのカマキリが通れば、餌と認知されてしまう。なので、オスは交尾にとても慎重にならなくてはいけない。
- 多足類:クモ類、ムカデ類など
- 多足類とは、腕・足が8本以上ある生物のことをいう。昆虫は6本が通常であるが、クモやムカデなどは8本からなので、多足類に分類される。
- クモは糸を張ってかかった獲物を食べるというのが一般的だが、他にも、糸を張らずに素早く動いて捕まえる種類や、巣穴を掘って待ち構える種など、種によって捕まえ方が変化する面白い生き物である。
- ムカデは大小様々な種類がいる。獲物を捕まえるときに毒を流し込む。ゴキブリが大好物で、他にもコオロギやクモ、ミミズなどを捕食する。大型のムカデはネズミやコオロギ、トカゲやヘビを食べることもある。毒があっても、カラスやニワトリ、トカゲやモグラ、クモなどは、ムカデを平気で食べている。
第2次消費者昆虫・多足類 (絵:中沢英正)
- 爬虫類:ニホンカナヘビ、ニホントカゲ
- 生息するトカゲの仲間は、ニホンカナヘビとニホントカゲの2種類だけである。両種とも、小さな昆虫やクモ、ミミズを食べている。ニホントカゲは、毛虫やゴミムシなどを嫌う傾向があるとも言われている。尻尾を自ら切り落とすことで、天敵から逃げることができる。
- 両生類:サンショウウオ・イモリの仲間
- トウホクサンショウウオ、ハコネサンショウウオ、クロサンショウウオ、アカハライモリ
- ハコネサンショウウオは、北海道と九州を除く各地の山地に生息し、山地渓流に最も適したサンショウウオです。標高2,000mを超える高地まで分布していますが、日本海側では標高20~30mの低地に産することもあります。冷たく澄んだ水を好み、苗場山や小松原、龍ヶ窪などで見られます。5月~8月が繁殖期だと言われていますが、石川県では4月~6月の初夏と10月~12月の晩秋の年2回産卵期がある個体群が見つかっているため、地域差があると思われます。卵は水源に近い渓流で岩盤の隙間など光の差さない場所に産み付けられます。冬に孵化した幼生はしばらく伏流水中にとどまり、春になると渓流に流れだし、トビケラやハエ目の幼虫などを捕食して2、3年後に変態して上陸します。
- 〈3次消費者〉
- 肉食・雑食の哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類などが入る。
- ここに属する生き物は、生産者、1次・2次消費者を捕食するが、2次消費者と立場が逆転することもある。例として、カマキリや大型のクモや大型のムカデは、小型の鳥類、両生類、小型の爬虫類、小型の哺乳類を捕食することがある。
- 哺乳類:齧(げっ)歯(し)類、コウモリ類
- 齧歯類とは、ネズミやリスなどの硬い前歯を持つ生物のこと。リスは草食のため、3次消費者ではネズミ類のことを指す。ネズミ類には大小様々な種類がおり、ドブネズミやクマネズミのような大きな約20cmを超える大型のネズミや、カヤネズミやヒメネズミのような小型のネズミまで多く確認出来る。
- ヤマネは日本の固有種で、国の天然記念物に指定されている。新潟県・長野県ともに準絶滅危惧種に指定されている。樹上で生活しているため、普段はなかなか姿を見ることは難しい。
- コウモリ類は、飛びながら昆虫を食べるため、蛾や蚊、ユスリカなどの夜行性の昆虫を好んで食べている。また、ウンカやヨコバイなどの米の害虫も食べる。吸血性のコウモリはいない。
- 爬虫類:ヘビ類
- タカチホヘビ、シマヘビ、ジムグリ、アオダイショウ、シロマダラ、ヒバカリ、ヤマカガシ、ニホンマムシ
- ニホンマムシは毒蛇であり、気をつけなくてはいけない種類のヘビである。45~60cmほどと、比較的小さなヘビである。山間部の水田や河川周辺、の湿った環境や草むらを好んでいる。攻撃性は低く臆病なヘビのため、とぐろを巻いてじっとしていることが多いが、気づかずに近くを通ったり、いたずらをすると咬みついてくるため、長靴を履いて歩くことを推奨する。威嚇行為として尾を細かくふるわせてくるため、この威嚇行為を見たら近寄らず離れれば害はない。
- 両生類:カエル類
- アズマヒキガエル、ニホンアマガエル、ダゴガエル、ニホンアカガエル、ヤマアカガエル、トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ツチガエル、ウシガエル、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエル、カジカガエル
- ニホンアマガエルは、小さな昆虫やクモを主に食べるが、動いているものにしか反応しないため、死んだものや動かないものは食べない。畑や水田において、イモムシやカメムシ、アブラムシなどの害虫を食べてくれるため、農家からはありがたい存在である。
第3次消費者 (絵:中沢英正)
- 鳥類:小型から大型の雑食性、肉食性の鳥類
- モズは約20cm前後で、スズメよりも大きい鳥類である。漢字では『百舌』と書くが、これは他の多くの鳥の鳴き声を真似ることができるため、そこから名づけられたといわれている。モズの特徴は鳴き声以外にも、『モズのはやにえ』と呼ばれる行動にある。これは、モズが完全なる肉食の鳥類だということを現している。モズは尖った枝や有刺鉄線などに捕まえた昆虫や小型の動物を刺しておく習性がある。また、モズは、嘴がタカやワシなどの猛禽類と同じように鋭く曲がっており、肉を食べやすくなっている。
鳥類の嘴の比較 (絵:中沢英正)
- 〈高位消費者〉
- 食物連鎖で最上位を占める動物のこと。生態系ピラミッドの頂点に位置し、エサとなる下位の生き物と広大なエサ場が必要なため、自然環境が変化すると一番影響が出てしまう。
- 哺乳類:ツキノワグマ、キツネ、タヌキ、ニホンザル、イノシシなど
- 鳥類:イヌワシ、フクロウなどの猛禽類
- ツキノワグマは本州最大の哺乳類で、草食が強い雑食性であり、植物を中心に季節に応じた様々なものを食べる。シカなどの死体があれば肉も食べる。春は前年から残ったドングリなどの堅果類、新芽や若芽、山菜を食べているため、山菜採り中に遭遇する可能性がある。夏はノイチゴの実などの植物や昆虫、秋は冬眠に向けて脂肪を蓄えるためにドングリやトチの実、クリなどの堅果類を中心に食べるが、実が少ない年は畑の農作物を食べに出てくる。
- キツネとタヌキはともに、日本の野生で見られる唯一の野生のイヌ科である。キツネはイヌのような体格をしているが、タヌキはずんぐりとした体形である。キツネはノウサギ、ネズミ、カエルなどの小動物を捕食する肉食だが、果実も食べる。タヌキは雑食性でネズミやカエルなどの小動物やカニ、魚や貝類、昆虫を食べ、クリやカキなどの堅果類、球根などの植物まで食べる。
- 猛禽類はワシやタカ、フクロウの仲間のことである。苗場山麓ではタカの仲間が8種類。フクロウが3種類、ハヤブサの仲間が2種類確認されている。
- イヌワシはタカの仲間で、猛禽類の中でも、より高位の消費者である。ヤマドリ、ノウサギ、ヘビ類を主食としており、広範囲の縄張りを飛び回って探すため、開けた草原などを好む。キツネを襲うことも多く、ツキノワグマやカモシカの幼体を襲うこともある。しかし、一度の繁殖行動で1個か2個の卵しか産まず、成鳥になる確率も高くないため、生息数が少なく、日本全国で500羽ほどしか確認できていない。
高位消費者 (絵:中沢英正)
参考・引用文献
佐藤井岐雄 1943 『日本産有尾類類総説』 日本出版社
チャールズ・ダーウィン(渡辺弘之訳) 1994 『ミミズと土』 平凡社
土壌微生物研究会 1997 『新・土の微生物(2) 植物の育成と微生物』 博友社
久馬一剛 2010 『土の科学 いのちを育むパワーの秘密』 株)PHP研究所
須原弘登など 2010 「Lyophyllum shimejiによるダイオキシンの代謝」『日本きのこ学会誌18巻3号』 日本きのこ学会
苗場山麓ジオパーク振興協議会 2021 『苗場山麓ジオパークGUIDEBOOK』 ほおずき書籍
安藤喜一 2021 『カマキリに学ぶ』 北隆館
栄村誌編纂委員会 2022 『長野県 栄村誌 自然編』 信毎書籍印刷株式会社