長野県境を流れる志久見川水系には、良質な無斑晶ガラス質安山岩が産出し、川原で人頭大から拳大の原石が容易に採取できる。この右岸に加用中条A遺跡としぐね遺跡が立地する。
加用中条A遺跡は、瀬戸内系石器群の担い手たちが無斑晶ガラス質安山岩を求めて狩猟移動して志久見川水系に辿り着き、石器製作跡を残した遺跡である。苗場山麓で確認できる瀬戸内系石器群の遺跡は、石核やナイフ形石器の単体出土であるが、加用中条A遺跡は、石核や剥片、ナイフ形石器、鋸歯縁加工石器や彫器・スクレーパー・礫器が組成する拠点活動痕跡である。
しぐね遺跡は、信州産黒曜石が大量に持ち込まれた遺跡である。両面加工尖頭器の先端左側に樋状剥離を施す特異な尖頭器の製作遺跡である。また、頁岩を多用した細原型彫器の共伴事例として注目される。黒曜石産地にある唐沢ヘイゴロゴーロ遺跡との関係に関して須藤隆司の論考がある。
参考文献
森先一貴ほか 2011 『加用中条A遺跡』 津南町教育委員会
佐藤雅一ほか 2019 『しぐね遺跡』 津南町教育委員会
須藤隆司 2023 「唐沢ヘイゴロゴーロ遺跡としぐね遺跡の黒曜石原産地推定と削片系両面調整石器群形成システム」『旧石器研究』 p21 日本旧石器学会
須藤隆司 2023 「遊動狩猟民の黒曜石コストパフォーマンス」『津南学』 第12号 津南町教育委員会