第Ⅳ期石器群

 狩猟用刺突具に変遷史の中で第Ⅳ期を考えた場合、その剥離技術の獲得や形態的安定性などから最終段階の刺突具として両面加工の尖頭器の出現期として評価される。
 中津川右岸に広がる貝坂段丘面で発見された道下遺跡は、第Ⅳ期を代表する石器製作跡の遺跡である。ここでは多様な尖頭器、すなわち周縁加工・片面加工・両面加工に分類される尖頭器資料に伴い石核と剥片の接合資料が出土している。その接合資料のうち、「両端交差型石核」と呼んだ打面を180度移動しながら交互に細長い剥片を剥離する技術の存在がある。近年、整理作業が進んだ楢ノ木平遺跡にも両端交差型石核が存在し、時間軸に配置して技術系統的な理解を深めた段階にある。
 これら尖頭器石器群を主体とする石器群に二側縁加工ナイフ形石器が伴うことに注意する必要がある。第Ⅲ期石器群の終焉期に配置した新井遺跡の主要組成比の反転現象が認められる。ここでは尖頭器石器群を主体とする段階として第Ⅳ期を設定したが、これも層位的検証のない仮説的編年試案である。今後、近接する貝坂桐ノ木平A遺跡や越那A遺跡、小千谷市真人原遺跡、三条市御淵上遺跡などを踏まえた尖頭器石器群の派生期から隆盛期、そして、細石刃石器群への過渡期を含めた、段階的な変遷に対する慎重なる検討に期待が寄せられる。
参考文献

中村孝三郎 1971 『御淵上遺跡』 長岡科学博物館
小野昭 1992 『真人原遺跡』 真人原遺跡発掘調査団
佐藤雅一・山本克 2006 『貝坂桐ノ木平遺跡群〈旧石器時代編〉』 津南町教育委員会
佐藤雅一 2017 『越那A遺跡』 津南町教育委員会
佐藤雅一ほか 2021 『道下遺跡 旧石器時代編』 津南町教育委員会
佐藤雅一ほか 2021 『新井遺跡』 津南町教育委員会
山本克ほか 2025 『楢ノ木平遺跡―第3次調査報告書―』 津南町教育委員会