押圧縄文系土器に伴う石器群

 隆起線文系土器群後半期の石器構成は、北林C遺跡と胴抜原B遺跡の石器組成を合せて概観することで、「相」を推測することができる。その「石器相」には久保寺南遺跡とは異なり、薄い木葉形尖頭器や石刃素材の石器、有溝砥石は欠落し、有舌尖頭器や局部磨製石斧、削器が組成する。
 ところが、押圧縄文系土器に伴う石器群は、剥片縁部に調整を施す不定形な削器類が組成の多くを占め、局部磨製石斧は残るが有舌尖頭器は姿を消す。新しく利用される石器として小形の凹基石鏃が組成に入り込む現象がある。
 大局的には、隆起線文系土器前半期の久保寺南遺跡段階では、石刃剥離技術が残り、石刃素材の石器や薄手の木葉形尖頭器、有溝砥石などが特徴的に組成する。しかし、押圧縄文土器段階では、横長剥片を剥離し、それを素材に不定形な削器類を製作する縄文石器製作基盤が整うと推測される。これら大局的な石器群の中間に移行的な石器製作段階があり、それが隆起線文系土器の後半段階であるといえる。
北林C遺跡の石器群
胴抜原B遺跡の石器群
押圧縄文石器構成

参考文献

今井哲哉ほか 2011 『北林A遺跡・北林C遺跡』 津南町教育委員会
佐藤信之ほか 2022 『胴抜原B遺跡』 津南町教育委員会
佐藤雅一ほか 2001 『久保寺南遺跡』 中里村教育委員会
佐藤雅一ほか 2017 『本ノ木-調査・研究の歩みと60年目の視点-』 津南町教育委員会